2016年11月21日、モスクワ、ボリショイ劇場における「ラスト・コンサート」の映像(ヴァレリー・ハリロフ指揮)。

АХ ТЫ, СТЕПЬ ШИРОКАЯ

ああ広き野よ
Музыка: Русская народная песня

ロシア民謡
Ах ты, степь широкая,
Степь раздольная,
Широко ты, матушка,
Протянулася.


ああ、広き野よ
広々とした草原よ
広々と母なるヴォルガは
延びてゆく
Ой, да не степной орел
Подымается,
То донской казак
Разгуляется.


おお、草原生まれではない鷲が
空を高く飛ぶ
ドン・コサック達が
浮かれ騒ぐ
Не летай, орел,
Низко по земле,
Не гуляй, казак,
Близко к берегу!


鷲よ、低く飛ぶな
大地の近くを
コサックよ、騒ぐな
ヴォルガの岸辺で!



 「ヴォルガの舟唄」と同じく古くから歌われている船曳きの歌。題名は感嘆符の違いで「おお広き野よ(ОЙ ТЫ, СТЕПЬ ШИРОКАЯ)」とされる場合もあり、ロシア語版Wikipediaではそちらを採っていますね。アレクサンドロフ・アンサンブルの生みの親であるアレクサンドル・アレクサンドロフ(1883-1946)、その弟子で国立モスクワ合唱団の創設者・指揮者として知られるウラディスラフ・ソコロフ(1908-1993)、ソヴィエト国立アカデミー・ロシア合唱団(スヴェシニコフ合唱団)の指揮者として有名なアレクサンドル・スヴェシニコフ(1890-1980)等が編曲を行っています。
 日本では、スヴェシニコフによるセッション録音が、アカデミー・ロシア合唱団の来日に合わせて発売され(題名は「おお広き野よ」)、親しまれてきました。その際、「合唱団が創立当時、最初に取り上げたロシア民謡で、1943年の第一回演奏会のオープニング・ナンバーとして歌われて以来、この合唱団の重要なレパートリーとなった」と解説され、それを読み録音を聴いた私の頭の中では「おお広き野よ=スヴェシニコフの合唱団」という公式が成立いたしました。実際には、合唱団の創立は1936年で、解説と時期が合わないのですが、戦争により一時活動が停止し1943年に再開した、とかいう事情があったのでしょうか?それはともかく重厚な立派な編曲です。
 私の頭の中の公式を崩してくれたのが、アレクサンドロフ・アンサンブルの実演です。ニューヨーク、モスクワ(複数回)と何度も聴いていますが、聴くたびに感動を新たにします。何と言うんですかね、直接脳にわぁーっと響きが伝わってくると言うんですかね。迫力が凄いですね。眼前にロシアの広大な広野と大河がばぁーっと現れるかのような…(自分、実際にはモスクワ中心部しか見たことないですけど)。何か聴いただけで旅をした気分になります。ぜひ一度、実演を聴いてみてください。



アレクサンドル・スヴェシニコフ指揮ソヴィエト国立アカデミー・ロシア合唱団の演奏。


アレクサンドル・スヴェシニコフ指揮ソヴィエト国立アカデミー・ロシア合唱団の演奏。1971年の映像。


1992年、モスクワ、ボリショイ劇場における演奏会の映像(イーゴリ・アガフォンニコフ指揮)。


1998年、モスクワ、チャイコフスキー・ホールにおけるアレクサンドロフ・アンサンブル
創立70周年記念演奏会の映像(ユーリー・ウーホフ指揮)。


黒海艦隊歌と踊りのアンサンブルの演奏(独唱:И.イルラリオノフ、Д.コロステレフ)。


ピャトゥニツキー・ロシア民謡合唱団の演奏。
2014年、モスクワ、チャイコフスキー・ホールにおける
ミトロファン・ピャトゥニツキー生誕150周年記念演奏会の映像。
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