1956年のセッション録音。 |
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ЧЕРНЫЙ ВОРОН |
黒いからす |
Музыка: Русская народная песня |
ロシア民謡 |
Черный ворон, Что ты вьешься, Что ты вьешься надо мной? Ты добычи не дождешься, Черный ворон, я не твой! Ты добычи не дождешься, Черный ворон, я не твой! |
黒いからすよ、 何故飛び回る、 何故俺の上で飛び回るのだ? お前は獲物を待っているのではない 黒いからすよ、俺はお前のものじゃない! お前は獲物を待っているのではない 黒いからすよ、俺はお前のものじゃない! |
Что-ж ты когти распускаешь Над моею головой? Иль добычу себе чаешь? Черный ворон, я не твой! Иль добычу себе чаешь? Черный ворон, я не твой! |
何故お前は俺の頭上で 爪を広げるのだ? 獲物を期待しているのか? 黒いからすよ、俺はお前のものじゃない! 獲物を期待しているのか? 黒いからすよ、俺はお前のものじゃない! |
Завяжу смертельну рану Подаренным мне платком, А потом с тобой я стану Говорить все об одном. А потом с тобой я стану Говорить все об одном. |
命にかかわる傷に包帯をする 贈られたプラトークによって そして俺はお前に語り始める ある事について全てを そして俺はお前に語り始める ある事について全てを |
Полети в мою сторонку, Скажи маменьке моей, Ты скажи моей любезной, Что за родину я пал. Ты скажи моей любезной, Что за родину я пал. |
俺の故郷へと飛んで行き 俺のおふくろに言ってくれ 俺の愛する人に言ってくれ 祖国のため俺は斃れたと 俺の愛する人に言ってくれ 祖国のため俺は斃れたと |
Отнеси платок кровавый Милой любушке моей. Ты скажи ― она свободна, Я женился на другой. Ты скажи ― она свободна, Я женился на другой. |
血に染まったプラトークを届けてくれ 俺の愛しいあの人に 伝えてくれ―彼女は自由の身だと 俺は別の女を娶ったと 伝えてくれ―彼女は自由の身だと 俺は別の女を娶ったと |
Взял невесту тиху-скромну В чистом поле под кустом, Обвенчальна была сваха ― Сабля вострая моя. |
寡黙でおとなしい花嫁を娶ったのだ 灌木の下、開けた広野で 結婚式には仲人もいた― 俺の研がれたサーベルのことだ |
Калена стрела венчала Среди битвы роковой. Вижу смерть моя приходит ― Черный ворон, весь я твой! Вижу смерть моя приходит ― Черный ворон, весь я твой! |
この身を真っ赤な矢が飾る 苛烈な戦いの最中に 死がやって来るのが見える― 黒いからすよ、今こそ俺はお前のものだ! 死がやって来るのが見える― 黒いからすよ、今こそ俺はお前のものだ! |
戦場で死にゆく兵士を歌ったロシア民謡。軍人版「果ても無き荒野原」といったところでしょうか。歌詞の意味も分からないまま初めて聴いた時、まるでお経を聴いているかのような感覚に襲われましたが、まあ間違ってはいなかったんですね。多分、題名から連想したのでしょうが。 アレクサンドロフ・アンサンブルの録音では、リアル過ぎて最後まで歌うのがはばかられたのかどうか知りませんが(多分そうでしょう 断言)、「祖国のために斃れたのだ」というところまで歌って後は省略しています。上記には省略された第5番以降の歌詞を青色で表示してみました。該当部分の歌詞の繰り返し等は、下に掲載したスレテンスキー修道院合唱団の録音に合わせています。 ロシア語版Wikipediaの「黒いからす」の記事によれば、この歌の元となった詩はネフスキー第1歩兵連隊の下士官だったニコライ・ヴェリョフキンの「緑の柳の下で(ПОД РАКИТОЮ ЗЕЛЁНОЙ)」という詩だったそうで、1837年に出版されています。やがてコーカサス地方の凄惨な戦いに駆り出されたドン・コサックの兵士等により曲が付けられ歌われるようになったようです。 1934年、ヴァシリエフ兄弟の監督により、国内戦の英雄であるヴァシリー・チャパーエフを主人公とした映画「チャパーエフ(ЧАПАЕВ)」が制作されます(音楽担当はガヴリイル・ポポーフ 1904-1972)。この映画ではチャパーエフが歌うなど全編にわたり「黒いからす」が使われたため、映画のヒットと共に「チャパーエフの歌」として広く歌われるようになりました。その後、時代により歌われる歌詞は様々だったようですが。 ◆映画「チャパーエフ」全編 以下、からすについての与太話。からすは鳥の中でも頭がよく適応能力に優れており人を恐れませんよね。人間様の動きを見切っているもんだから、ゴミを漁ったり、農作物に害を及ぼしたり、まさかと思うような場所に巣づくりして雛が孵ると近くの人間を攻撃する…。だから忌み嫌われることも多いです。その昔、学生時代に夜行電車で東京に行った時、夜明け前の街(新宿だったっけ?)を彷徨っていたらあっちにもこっちにもからすがうろついていて(しかも田舎者の自分を「ギョエエエエ」って威嚇しやがった怒)恐怖を覚えたことがあります。あの頃はまだ生ごみの管理がゆるゆるだったからねえ。人間の死体にも群がることもあるんでしょうね(実際に見たことないけど)。でも、からすって非常に家族思いの愛情深い鳥でもあるんですよ。昔、自治体の有害鳥獣駆除の仕事の手伝いをしたことがあります。地元の猟友会のメンバーが鳩や鴨、からすなどを鉄砲で撃ち、その死骸を拾って集める仕事なんですけど(駆除数を報告する必要がある)、他の鳥はそうでもないんですけど、からすは群れの中の一羽が撃たれると、一旦逃げても必ず撃たれたところに舞い戻って安否を確かめるんです。撃つ方はその習性を知っているものだから、からすの群れ見つけて一羽撃ったら身を隠して舞い戻ってくるのを待つ。戻ってきたのを撃つ。また静かに身を潜める。また戻って来る。撃つ。からすの一家全滅。見てて泣けてきました。こうなると頭がいいのか悪いのか…。 |